Alicante Bouschet (VIVCでの登録はAlicante Henri Bouschet)
アリカンテ・ブーシュ / アリカンテ・アンリ・ブーシュ
果実の色 | 黒 |
種 | Vitis vinifera |
原産地 | フランス |
有名産地 | フランス |
シノニム | あり |
VIVC登録番号 | 304 |
●概要
Alicante Bouschet とは、フランスで開発された黒ブドウ品種です。
果肉までアントシアニンにより着色されたTeinturier (タンテュリエ)系のブドウです。
果肉にも色素があるため、透明なジュースを得る事が難しく白ワインの生産はできないブドウです。
●原産地
Alicante Bouschet の原産地はフランスです。フランス南部のエロー県に存在した Domaine de la Calmetteで Henri Bouschet が品種交配により開発した品種です。
●名前の由来
Alicante Bouschet の名前の由来について明確な文献は見つかりませんでした。
しかし歴史などを調べていくことでちょっとした予想をしてみました。
まずBoushetは開発者であるHenri Bouschet に由来しています。それは親品種であるPetit Bouschetにも同じ単語が使われています。またAlicanteという言葉はスペインに由来すると思われます。Alicanteという名前はバレンシア州にある港湾都市の名前、またスペインでのグルナッシュのシノニムでもあります。
おそらくTeinturier (タンテュリエ)系のブドウの開発を行っていたHenri Bouschet がGarnacha Tinta とPetit Bouschetを使用して作り出したブドウという意味ではないかと思っています。
●歴史
Alicante Bouschet は1855年に南フランスのエロー県にあったDomaine de la Calmetteで当時働いていたHenri Bouschetによって開発されました。
19世紀にワイン造りの課題の一つとされていたワインの色合い(色の濃さや深さを安定・向上させる)の問題を解決するためにつくられた品種のひとつです。
しかし開発当初はあまり人気が出ませんでした。しかし1860年代以降フィロキセラによって荒廃したヨーロッパのブドウ畑に多く植栽されることになりました。Alicante Bouschet は成長が早く、高収量であったため、ヨーロッパのワイン産業を再建させるために選ばれました。
その後、国際品種への注目の高まりや接木の技術向上などにより、植栽は減少しました。
現在は改めて土着ブドウに対する注目が集まっており小規模な個性的な生産者によって栽培されることも増えています。
また、旧ソビエト連邦の国々など寒い地域での新品種開発にも多く使われました。これは果肉まで色付いているというTeinturier (タンテュリエ)系のブドウの特徴をいかしたもので、日照や温度の足りない地域でも多くのタンニンなどのフェノール類を得ることのできるブドウ(=ボルドーのようなワインを作ることのできる品種)を開発するのが目的であったと考えられます。
●ブドウの特徴・栽培特性
Alicante Bouschet の特徴は
果皮だけでなく果肉にもしっかり色のついたTeinturier (タンテュリエ)系のブドウであることです。
顆粒は中〜大型で、果皮にはしっかりとした蝋質がみられます。
樹勢は強く、高収量、萌芽も成熟も早い早熟品種です。
高品質な果実を得るためには、土地の選択と、しっかりとした剪定・収量が増えすぎないように管理する事が重要です。
霜・風・乾燥に弱く、病害にもあまり強くありません。萌芽が早いため春の霜の被害には注意が必要です。
病害では特にカビ系の病気に弱く、うどん粉病・べと病・灰色かび病・炭疽病などの被害は多くみられます。
またファイトプラズマ (Phytoplasma)と呼ばれる細菌による病気の被害もみられます。この細菌に感染すると果実ではなくブドウの木そのものに影響が出ます。樹や葉が黄変や黒変をしてしまい、光合成の阻害や枯死などが起こるとされています。
●関連する品種やDNA鑑定について
Alicante Bouschet は交配によって開発された品種のため関連品種については多くのことが判明しています。
Garnacha Tinta × Petit Bouschetの掛け合わせによって生まれた品種で、1855年に南フランスのラングドックにあったワイナリーDomaine de la CalmetteでHenri Bouschetによって開発されました。Domaine de la Calmetteというワイナリーを検索するとカオール地区に存在しますが設立年などから別のワイナリーであると思われます。
またロシア圏で重宝されているAlibernetはAlicante Bouschet × Cabernet Sauvignonによる交配品種でこちらもTeinturier (タンテュリエ)系のブドウです。
地域によってCabernet FrancのことをBousche〜と呼ぶことがありますがこの2つの品種に関連はありません。
また同時期に開発された別のブドウのいくつかが、Alicante Bouschetと呼ばれていることがあります。
●主な産地
Alicante Bouschet の主な産地は南フランスのラングドック=ルーション、スペインやポルトガルです。またアルジェリアなど北アフリカやアルジェリアなどのロシア圏でも栽培されています。
20世紀後半に国際品種の人気の高まりから植え替えが多く行われ、作付け面積は大幅に減少しました。
しかし現代では格安のブレンドワインだけでなく、小規模な生産者による高品質なワインも生産されるようになりました。
アメリカでは禁酒法時代に重宝されたブドウの一つでした。しっかりとした果皮が長期間の輸送に耐えられるためカリフォルニア州からニューヨークなどに生食用ブドウとして送られ、こっそりとワイン造りに使用されていました。しっかりとした色調と豊富な果汁により多くの密造酒が生産されたといわれています。
●ワインスタイル
Alicante Bouschet はいくつかのブドウ品種を合わせたブレンドワインを生産するのに使用されることが多いとされています。
果皮・果肉ともに着色されているため、高収量で収穫した場合も多くのフェノール類を含んでいます。そのためブレンドの際は色調を補うために使用されることが一般的です。高収量のAlicante Bouschet は糖度が下がってしまうことも多いですがそれを補ってあまりある色調を生み出せるとされています。
同じラングドックで栽培されているAramonとブレンドされることが非常に多いです。しかし、この組み合わせによるワインで長い余韻が得られることは少なく、カジュアルなワインになることが多いです。
ロシアに近いアゼルバイジャンではAlicante Bouschet を使用して甘口の赤ワインを生産することもあります。
●シノニム
Alicante Bouschet は多くの地域で栽培されているため、交配品種でありながら数多くのシノニムが存在します。
現在VIVCには67もの別名が登録されています。
地域によってCabernet FrancのことをBousche〜と呼ぶことがありますがこの2つの品種に関連はありません。
また同時期に開発された別のブドウのいくつかが、Alicante Bouschetと呼ばれていることがあります。
Synonyms: 67
ALICANT DE PAYS、ALICANTE、ALICANTE BOUCHET、ALICANTE BOUSCHET、ALICANTE BOUSCHET 2、ALICANTE BOUSCHET CRN、ALICANTE ENRICO BOUSCHET、ALICANTE EXTRA FERTILE、ALICANTE FEMMINELLO、ALICANTE H. BOUSCHET、ALICANTE NERO、ALICANTE NOIR、ALICANTE TINTO、ALICANTINA、ALIKANT、ALIKANT BUSE、ALIKANT BUSE BOJADISER、ALIKANT BUSHE、ALIKANT BUSHE EKSTRAFERTIL、ALIKANT BUSHE NR. 2、ALIKANT GENRI BUSHE、ALIKANTE HENRI BOUSCHET、ARAGONAIS、ARAGONES、ARRENAOU、BAGA、BAKIR UEZUEMUE、BARVARICA、BLASCO、BOJADISERKA、CARIGNAN JAUNE、COLORINA、COLORINO DI PISA、CUPPER GRAPE、DALMATINKA、GARNACHA、GARNACHA TINTOREA、GARNACHA TINTORERA、KAMBUSA、LHADONER、LIKANT、LIKAVIT、MORATON、MOURATON、MURVIEDRO、NEGRAL、PE DE PERDIZ、PE DE POMBO、PETIT BOUSCHET、REDONDAL、RIKANT、RIVESALTES、RIVOS ALTOS、ROUSSILLON、ROUVAILLARD、SUMO TINTO、TINTA FINA、TINTA FRANCESA、TINTO、TINTO NERO、TINTO VELASCO、TINTORERA、TINTORERA DE LIRIA、TINTORERA DE LONGARES、TINTORIA、TINTURAO、UVA DI SPAGNA
●相性の良い料理や食材
Alicante Bouschet と相性が良いとされる料理や食材は
タンニンやスパイスと相性が良いとされる食材
また北アフリカやロシア圏でも多く栽培が見られるため
各地の土着料理との相性も良さそうです。
シラチャーソースを使った赤身肉の切り落としの炒め
スパイシーなケバブ
唐辛子の肉詰め
●代表的なワイン
Alicante Bouschet は各国でさまざまなワインになっています。
スペインやポルトガルではしっかりとした赤ワイン
南仏では気軽に飲めるようなカジュアルワイン
個人的にはアゼルバイジャンの甘口の赤やアルジェリアなど北アフリカのワインが気になりますが、購入可能なサイトが見つかりませんでした。
もしご存知の方がいらっしゃいましたらお知らせいただけると嬉しいです。
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